

『恋するカニ』
若いカニが、輝くばかりに美しいイワシに恋をした。
しかしイワシは真っ直ぐに歩けるまともな相手でないと嫌だと言って、カニの求愛をけんもほろろに退けた。
一ヶ月のあいだカニは死にものぐるいの努力を重ね、ついに真っ直ぐに歩けるようになった。
カニは再びイワシを訪れ、胸を張って行った。
「どうです、僕は真っ直ぐ歩けるようになりました。これが深い愛のあかしでなくて一体なんでしょう!」
イワシはカニの一途な情熱にほだされて、結婚を承知した。二人はめくるめるような初夜を過ごした。
しかし翌日、イワシはカニが元のとおり横に歩くのを見て叫んだ。
「あなた、前と同じ歩き方じゃない! もうあたしを愛していないのね?」
するとカニは面目なさそうに視線を落としながら、
「いや、愛してるよ。ただ、いつも酔っ払ってばかりはいられないから……」


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