『顔が利く』

 遊び仲間のステファンが有名人の名前をやたらに出すのに飽き飽きしていたチャーリー。
「おまえ、そんなに顔が利くなら、おれの見てる前でホワイトハウスに電話して、大統領と話してみろよ」
「わかった」
 ステファンは気軽に応じると、ぽんぽんとダイアルボタンを押し、相手と二言三言交わしてから受話器をチャーリーに渡した。チャーリーの耳におなじみの声が聞こえてきた。
「大統領だけど、何の用事だい」
 そんなまさか驚いたチャーリー。まだ半信半疑だった。もしかしたらステファンのトリックかもしれない。
「たしかにすげえや。でもおまえ、バッキンガム宮殿に電話してエリザベス女王と話すのは無理だろう?」
 それを聞いたステファン、友人の目の前でダイアルボタンを押し、受話器をチャーリーの耳にあてた。聞こえてきたのは、例の声で話すクイーンズイングリッシュだった。
「英国女王のエリザベスですけど?」
 これにはさすがに驚いたチャーリー。今度はステファンの顔がどこまで利くのか知りたくなった。
「じゃあおまえ、ローマ法王と話せるかい?」
 するとステファンはチャーリーを連れてローマのフェミチーノ空港まで飛び、そこからタクシーでバチカン宮殿前の広場に着いた。広場にはローマ法王のスピーチを聞こうと大勢の人々が集まっていた。
 ステファンがチャーリーに言った。
「ちょっとここで待っててくれ。おれはローマ法王と話してくるから」

 チャーリーがベランダを見守っていると、なんとステファンとローマ法王が並んで登場してきたではないか。
 仰天のあまり、口をあんぐり開けているチャーリーの腕を、観光客らしい見物人がぽんぽんと叩いた。
「すみません。あそこにいるステファンの横に立っているのは誰ですか?」
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