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『リンゴを一個』

 アメリカでは成功した人が公共施設に巨額の寄付をし、自分の名前を冠してもらうことがある。

 ある大学でこけら落としが挙行され、図書館建設のために莫大な援助をした実業家が大勢の学生を前にして来賓として記念講演をした。

「みなさん、これからいかにしてわたしが巨万の富を築き上げたかをお話ししたいと思います。

 十七歳のとき、道ばたでリンゴを一個拾いました。
 そこでそのリンゴをきれいに磨き上げて売りました。

 手に入れた金で新たにリンゴを二つ買いました。
 そしてまたその二つのリンゴを売って、手に入れた金で四つのリンゴを買いました。

 こうして二週間後にはリンゴを入れるかごも買うことができました。
 こんなふうに粒々辛苦して半年後にはリンゴを運ぶための小さな車を買うことができました。

 そしてこの時です。

 わたしの祖父が突然この世を去り、数億ドルの遺産がわたしに転がり込んできたのです」
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